捕まる夢

夢の中で少年か少女のような姿になっているときは、大抵誰か知らない人が、よこしまな気持ちで私の手首を掴んでどこかへ連れて行こうとする。

大抵夢の中で視点になるのは10歳くらいの年頃だった、自分は昔から病的な細さだったから、手首があまりに細くて心配されたことがあった。その時の記憶がずっと残っているのか、夢の中で視点になる子供もみんな必ず手首が異様に細い。

おまけに自分は、これも虚弱体質のせいで病的に白く、そのせいでよく「お化け」呼ばわりされていたのだが、それもすごく嫌いだった。なぜならこの虚弱的な体質が、自分は嫌いで嫌いで仕方なかったからだ。白く頼らない手首とは、自分の疎んじる虚弱体質の象徴そのものであり、自分という存在の弱さ、力の及ばなさを嫌でも突き付けてくるものだったからだ。

その嫌いなモチーフを強調するように手首を掴む、顔も思い出せないが、いつもいつもよこしまな目と、邪悪な憤怒で自分を抑えつけ、どこぞに連れてゆこうとする大人。

以前は少女で、服を裂かれて辱めを受け、力の及ばない大人の男に片手首を掴まれ、吊り上げられた状態で連れていかれる夢だった。おぞましくて、おぞましくて、持てる力の限り抵抗したが、敵わずに泣きながら引いていかれてしまった。

つい最近は少年で、ヒステリックな年配の女性にとにかくやつあたりのようになじられる夢。折檻のために片手首を掴まれる。なにかの罪を犯したと言って自分に当たるが、明らかに免罪で、自分は何もしていないのに、と決死の思いで叫ぶが、聞き入れてもらえずに無力に連れていかれる夢。これは憤りが強かった。

 

多分、この知らない大人は誰かや環境の意思の具現化で、そういう大きなものに流されたり、制限されるのをとにかく拒みたいのだろうな、と思った。大抵自分はそこで死ぬほど抵抗するけど、無残にも敗北する。それが自分にとっては屈辱で仕方ない記憶として残る。

 

腹の底ではいつも据えかねた想いをぐらぐらに煮詰めて抱えているのだけど、よく笑っている。ほんとうのことなど何一つないのだと言って笑うしかない。だって、こんな薄暗い物語は自分が望んでいないから。花のようにうつくしい物語を愛しているから、自分の怒りなんて介在する余地すらなくてよいのだ。なにもなかったかの様に、自分がわらうのと同じように、他人もそうであってほしいと望むだけなのだ。